2025年5月16日に公開される映画「サブスタンス」を、特別先行“接種”上映で鑑賞してきました。
ただのサスペンスやホラーではなかったです。美と若さに取り憑かれた人間の欲望が、常識も倫理もぶち壊しながら暴走していく様は、狂気すら感じるほどのパワーがありました。
「サブスタンス」あらすじ
元トップ人気女優エリザベスは、50歳を超え、容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、ある新しい再生医療<サブスタンス>に手を出した。
接種するや、エリザベスの背を破り脱皮するかの如く現れたのは若く美しい、“エリザベス”の上位互換“スー”。抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。スーは一足飛びに、スターダムへと駆け上がる。
一つの精神をシェアする存在であるエリザベスとスーは、それぞれの生命とコンディションを維持するために、一週毎に入れ替わらなければならないのだが、スーがタイムシェアリングのルールを破りはじめ―。(公式サイトより)
若さと美に取り憑かれた“狂気”
この映画、正直「冷静に考えたら絶対おかしいやろ」ってツッコミどころ満載なんです。でも、観ている間は全然気にならない。むしろ夢中で引き込まれて、いつの間にか「まぁアリかなぁ…」って納得してしまっている。最初から最後まで欲望に対してノンストップに突き進んでいきます。
かわいくて、セクシーで、グロテスクで、狂気じみてて。
そのすべてが突き抜けていて、ある種の清々しさすらある作品でした。
かなりデフォルメされた表現が多く、人によっては嫌悪感を抱いてしまうこともあるかもしれないです。
若さと美しさへの執着
この映画が刺さるのは、「美と若さに対する執着」がテーマになっているから。
自分と他人の容姿を比べて落ち込んだり、何気ない一言で傷ついたり、自信をなくしたり――
多くの人が一度は経験したことがあるんじゃないかなと思います。
でも「サブスタンス」は、そういう苦しみや葛藤をあざ笑うかのような、狂気の展開でねじ伏せてくる。「あれ、もう若さとかいらないかも」って、逆に力が抜ける感じすらありました。
ルール破りの代償があまりにも悲惨…
スーがルールを無視してやりたい放題している間、エリザベスの容姿はどんどん老け込み、もはや老婆のように…。その姿は本当にショッキングで、痛々しいというより、悲しすぎた。
体を張った2人の演技
バスルームで全裸で転がったり、アクション映画さながらの取っ組み合いをしたり…。
デミ・ムーアとマーガレット・クアリー、二人とも体張りすぎ!
R15指定だけど、性的な描写も目線の描き方もリアルで、ギリギリのラインを攻めてきます。性行為シーン自体はないけれど、見ていて「これ本当にR15でいいの?」って感じるレベルです。
デミ・ムーア×マーガレット・クアリーがすごすぎる
デミ・ムーア完全復活
かつて『ゴースト』で一躍有名になり、「素顔のままで」「G.I.ジェーン」など話題作に出演してきたデミ・ムーア。
でも、最近は名前を聞く機会も減っていて、「あの人は今」状態だったのも事実。
そんな彼女が「サブスタンス」で完全復活。
エリザベスの境遇は、今の彼女自身とも重なる部分が多くて、まさに“適役”。
かつての栄光を取り戻したいというエリザベスの葛藤は、デミ自身のキャリアとも重なり、説得力が桁違いです。
突飛な役柄に隠れがちだった演技力の高さも、今作でしっかり伝わってきました。
マーガレット・クアリーの怪演
もう一人の主役スーを演じるマーガレット・クアリーの演技も圧巻。無邪気さと狂気の同居したパフォーマンスで、ただ美しいだけのキャラにとどまらない存在感を見せてくれます。
ロサンゼルスが舞台、だけど実はフランスで撮影
作中では舞台がLAになっていますが、実はこの映画、撮影はフランスで行われています。
パリのスタジオと南フランスのロケ地で撮影されたそうで、LAらしいカットといえば、ウォーク・オブ・フェイムの星型プレートとヤシの木くらい。
一瞬、おや?と思うけど、不思議と違和感はないんですよね。
むしろ、どこか非現実的な映像が続くせいか、「舞台がLA」と言われても妙にリアリティがない。
それがこの映画の狂気性や不穏な空気ともマッチしていて、観ている間はまったく気になりませんでした。そのあたりの雰囲気も、作品の魅力のひとつだと感じました。
まとめ:この映画、観るか迷ってる人へ
「サブスタンス」は、観る人を選ぶ映画かもしれません。
過激な描写や独特なテンションに抵抗を感じる人もいると思います。
でも、「美しさ」「若さ」「老い」といった、誰もが一度は向き合うテーマを、これでもかというくらい振り切って描いてくるこの作品は、間違いなく記憶に残る一本。
- 普通の映画じゃ物足りない
- 美しさや若さへの執着にモヤモヤしたことがある
- デミ・ムーアが好き
- とにかく振り切った映画が観たい
そんなあなたに、「サブスタンス」はおすすめです。
下記メイキング映像の20分以降にクライマックスの一部シーンがチラ見できます。